アトピー性皮膚炎のかゆみや炎症で苦しんでいませんか?
近年、医療レーザーを用いた新しい治療が注目され、その改善効果が期待されています。
当記事では、レーザー治療がどのようにアトピー症状を改善するのか、具体例や最新研究を交えて詳しく解説します。また、治療費用や通院回数、メリット・デメリット等を徹底比較し、安全性や副作用にも触れながら分かりやすくまとめています。
目次
アトピー性皮膚炎にレーザー治療は効果的?期待できる改善効果
アトピー性皮膚炎の症状には個人差がありますが、根本的な改善を目指す治療法の一つとしてレーザー治療が注目されています。レーザー照射によって症状が緩和されるメカニズムや実際の改善効果について見ていきましょう。
かゆみや炎症の緩和
レーザー照射は皮膚の深部まで熱が届き、炎症を起こしている部分を鎮静化する働きがあります。これによりかゆみを引き起こす炎症性サイトカインの産生が抑制され、症状が緩和されると考えられています。実際に、肌の炎症が治まると掻き壊しによる悪循環が減り、かゆみが軽減されて皮膚状態が改善に向かうケースが報告されています。
とくに医療用ダイオードレーザーやアレキサンドライトレーザーでは、照射と同時に皮膚温度が上がることで血行が促進され、ターンオーバー(肌の生まれ変わり)が正常化しやすくなります。結果として、赤みや湿疹の改善が期待でき、炎症の進行を抑える効果が実感しやすくなります。
皮膚のバリア機能改善
アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が低下して乾燥や刺激に弱い状態になりますが、レーザー治療によりバリア機能が強化される可能性があります。レーザー熱によって皮膚の自然治癒力が高まり、表皮のターンオーバーが促されることで、肌の表面が整って乾燥しにくい状態へ導かれます。
バリア機能の改善に伴い、外部のアレルゲンや刺激物質が侵入しにくくなるため、かき壊しによる二次感染や炎症の悪化も防ぎやすくなります。保湿ケアと組み合わせてレーザー治療を行うことで、乾燥しがちなアトピー肌のうるおい維持にもつながります。
脱毛による摩擦刺激の軽減
アトピー性皮膚炎患者の中には、ムダ毛処理による皮膚刺激で症状が悪化するケースがあります。医療レーザー脱毛を活用することで、カミソリなどによる日々の摩擦が減り、皮膚への負担が軽減されるというメリットがあります。
ムダ毛が減ると皮膚表面への刺激が減少し、かゆみを引き起こす原因がひとつ取り除かれます。加えて、脱毛レーザーの照射自体にも成長を抑える熱作用があるため、軽い炎症やシミ予防といった美容効果も期待でき、結果的にアトピー症状の改善に良い影響を与えることがあります。
レーザー治療がアトピーに効くメカニズム
レーザー治療がアトピーに効果を発揮する理由は、科学的にもある程度解明されています。主に以下のような作用で症状改善が期待されます。
炎症性サイトカインの減少
アトピー性皮膚炎では特定の炎症性サイトカインが過剰に分泌されることが知られていますが、レーザー照射によりその産生が抑制される可能性があります。熱エネルギーによって炎症部位が一時的に「リセット」され、免疫細胞の過剰な活動を鎮める効果が期待されます。この光免疫療法的な作用により、かゆみや赤みを引き起こす炎症反応を抑えることができると言われています。
皮膚常在菌バランスの改善
健康な皮膚には表皮ブドウ球菌など良い常在菌が多く存在し、悪玉菌(黄色ブドウ球菌など)の増殖を抑えています。アトピー性皮膚炎では悪玉菌が優勢になりやすく、炎症やかゆみを引き起こすことが多いですが、レーザー照射により皮膚表面が整うことで良い菌が増えやすくなり、常在菌バランスが改善することが期待されます。
これにより、悪玉菌が産生する毒素やバイオフィルムが減少し、肌の免疫反応が正常化しやすくなります。つまり、レーザー治療後は皮膚の自己治癒力が高まり、常在菌によるバリア作用でアトピーの症状が落ち着きやすい環境が整います。
光免疫療法としての作用
レーザー治療は一種の「選択的光免疫療法」として働く側面もあります。紫外線治療(ナローバンドUVB)と同様に、局所的に炎症を抑える効果が期待されますが、医療用レーザーの場合はUVを含まない可視光や近赤外線を使うため、長期的な皮膚への負担が軽減されます。
傷んだ皮膚にレーザー光を照射すると、炎症部分だけに反応してターンオーバーが促進され、健常な皮膚に余計なダメージを与えにくいのが特徴です。こうした光免疫療法的な働きにより、アトピーが慢性化する悪循環を緩和し、症状改善につなげることができます。
レーザー治療の種類と選び方
アトピー改善に用いられるレーザー治療には複数の種類があり、それぞれ特徴が異なります。ここでは代表的なレーザー機器と、そのアトピー治療における役割や注意点をまとめます。
アレキサンドライトレーザー
アレキサンドライトレーザー(波長約755nm)は脱毛治療でもよく用いられるレーザーで、メラニン色素への吸収性が高いのが特徴です。日本では「ジェントルマックスプロ」などが代表的な機器です。比較的波長が短いため、皮膚表面近くの毛根に熱が集まりやすく、産毛を含めた減毛効果が高いです。
アレキサンドライトレーザーの照射で皮膚深部のコラーゲン生成も促されるため、肌の凹凸やシミにも効果が期待できます。アトピー性皮膚炎においては、かゆみや赤みに対する効果が報告されており、主に白くて薄い肌質の方に適しています。ただし色素沈着が強い部位や活動期の炎症部位への照射は慎重を要します。
ダイオードレーザー
ダイオードレーザー(波長810~940nm)は肌質を選ばず使え、高い減毛効果があるレーザーです。代表的な機器には「メディオスターNeXT PRO」などがあります。ダイオードレーザーは蓄熱式照射も可能で、長い時間をかけてゆっくり熱を加えることで痛みが少ないのが特徴です。
先述のMoritaらの臨床結果でも、830nmの半導体レーザー照射により約80%の患者でかゆみが軽減したとの報告があります。ダイオードレーザーは皮膚にやさしく照射できるため、アトピー体質の方でも比較的安全に試せる可能性が高い治療法です。定期的な照射により炎症や発疹の改善が期待できます。
Nd:YAGレーザー
Nd:YAGレーザー(波長1064nm)は医療脱毛・皮膚治療用のロングパルスレーザーで、他のレーザーよりも波長が長く肌の深部まで熱が届くのが特長です。黒いメラニン吸収は少ないため色黒の方にも使用できますが、深部まで熱が届く分、注意が必要です。
アトピー性皮膚炎では、症状が落ち着いた時期にNd:YAGレーザーを使うことがあります。最新の研究では、活動期の炎症部位にNd:YAGレーザーを複数回照射すると症状が悪化するリスク(ケブネル現象)が指摘されているため、悪化期には使用を避けるのが安全です。安定した状態の皮膚や色素沈着対策として慎重に検討されるレーザーです。
エキシマレーザー(UV治療)
エキシマレーザーは308nmの紫外線(エキシマライト)を特殊なレーザー光として照射する治療法で、アトピー性皮膚炎に対して保険適用で行われる光線療法です。紫外線特有の光免疫効果で炎症を強力に抑え、痒みを軽減する効果が期待できます。
エキシマレーザーは患部だけに照射できるため、周囲の正常な皮膚への影響が少ないのが利点です。従来の紫外線治療より短時間で治療が済む最新機器が登場しており、数秒の照射で効果を得られる場合もあります。ただし紫外線を使う治療のため、照射後は日焼け止めなどで紫外線予防を徹底する必要があります。
レーザー治療の費用と通院の目安
レーザー治療は保険適用されない自由診療となることが一般的です。治療にかかる費用や通院頻度は、クリニックや照射範囲によって異なりますが、一般的な目安をご紹介します。
施術費用の目安
医療レーザー脱毛の場合、クリニックによって費用設定はさまざまですが、照射部位や照射面積、時間で料金が決まることが多いです。たとえばダイオードレーザーを用いる場合、1分1,000円~2,000円程度から受けられるクリニックが多く、ワキや腕など広い範囲を短時間で照射するなら1回数千円~1万円程度のケースが一般的です。
エキシマレーザーなどの光線療法では、保険診療の場合は3割負担で1回あたり数百円程度(保険適用外では約1回3,000~5,000円)で受けられます。回数制ではなく1回ごとの単価設定が一般的です。いずれの場合も、施術範囲や治療プランによって費用は変動しますので、事前にカウンセリングで確認することが重要です。
必要な施術回数・頻度
効果を実感するまでには複数回の照射が必要です。レーザー脱毛では肌質や毛量に合わせて2~3ヶ月間隔で5~10回程度のコースが推奨され、アトピー症状の改善では継続的な照射がカギとなります。また、皮膚の状態を見ながら少しずつ感受性を上げる意味でも、1回照射してすぐ次に照射するのではなく数週間~1ヶ月空けて治療を繰り返します。
エキシマレーザーなどの場合は、症状に応じて週1~2回程度から始め、改善が見えたら徐々に間隔を開ける進め方が一般的です。初期治療として週に数回の照射を数週間行った後、改善度合いに合わせて月1~2回のメンテナンスに移行するケースが多いです。
他の治療法との費用・効果比較
レーザー治療と他の治療法を比較した場合、費用面や効果面にも違いがあります。下表で代表的な治療法を比較してみましょう。
治療法 | 内容・特徴 | 費用の目安(1回) | 保険適用 |
---|---|---|---|
医療レーザー(ダイオード) | 脱毛用レーザーで炎症改善 日常的なムダ毛処理不要になる |
5,000~10,000円程度 | ×(自費診療) |
エキシマレーザー | 308nm紫外線で局所照射 炎症を抑制し痒みを軽減 |
保険3割負担:約数百円 (自費:約3,000~5,000円) |
◯(保険診療) |
ナローバンドUVB療法 | 全身または局所照射で炎症抑制 保険適用の光線療法 |
保険3割負担:500~1,000円程度 (自費の場合:約3,000円) |
◯(保険診療) |
内服・外用薬 | ステロイド外用・免疫抑制外用 抗ヒスタミン等の内服 |
保険3割負担:1,000円程度 (薬剤の種類による) |
◯ |
上記のように、レーザー脱毛は効果が見えにくいと感じる場合には回数を重ねる必要がありますが、脱毛が進めば日常ケアが楽になるという付加価値があります。一方、保険適用の光線療法や薬物療法は1回あたりの費用はやや低めですが、通院頻度や薬の使用継続が必要となることが多いです。
レーザー治療のメリット・デメリット
レーザー治療には利点と注意点があります。自分の肌状態や生活スタイルに合わせてメリット・デメリットを比較検討しましょう。
メリット
- 非侵襲的で体への負担が少ない:切開や注射を伴わないため、術後のダウンタイムがほとんどありません。
- 炎症抑制と脱毛の両方が期待できる:アトピー症状の改善だけでなく、ムダ毛処理の手間も減らせる相乗効果があります。
- 副作用が比較的少ない:紫外線を使わないレーザー治療では、長期的な皮膚ダメージのリスクが低いとされています。
- 美容効果も得られる:コラーゲン生成の促進で肌質が改善し、シミや色ムラの軽減も期待できます。
デメリット・副作用
- 治療に時間と費用がかかる:効果を実感するには定期的な通院が必要で、トータルの費用負担は大きくなります。
- 痛みや熱感を伴う:レーザー照射時には輪ゴムで弾かれたような痛みや熱い感覚があり、まれに重度の場合は麻酔が必要なこともあります。
- 効果には個人差がある:全ての人に同じように効くわけではなく、肌質や症状の状態によって改善度合いは異なります。
- 術後は肌が敏感になる:照射直後は一時的に赤みやほてりが出ることがあり、場合によっては火傷や水ぶくれのリスクもあります。
注意点・施術後のケア
レーザー治療を安全に受けるためには事前準備と施術後のケアが重要です。次の点に注意してレーザー治療に臨みましょう。
施術前の注意事項
- 日焼け・肌の炎症に要注意:照射予定部位が日焼けしていたり炎症が起きていると、火傷や色素沈着のリスクが高まります。施術前は強い日光を避け、肌を健康な状態に整えておきましょう。
- 服用薬の確認:光過敏症を引き起こす薬を内服している場合は、照射による刺激が強くなることがあります。医師に薬の服用歴を必ず伝えましょう。
- 妊娠中・授乳中は医師と相談:レーザー治療は妊娠中の安全性が確立されていない場合があります。疑わしい場合は事前に医師に相談してください。
施術中・施術後の痛み・副作用
- 麻酔クリームの使用:機種や治療部位によっては、痛みに弱い方のために表面麻酔クリームを使えることがあります。施術前に相談してみましょう。
- 刺激・赤み:照射直後は皮膚が軽く赤くなる程度で1~2日で落ち着くことがほとんどですが、長時間赤みが続く場合は適切な処置が必要です。
- 熱感や水ぶくれ:照射直後にほてりや軽度の水ぶくれが生じるケースもあります。高い熱感を感じたら氷などで冷却し、異常が長続きする場合は施術医に連絡しましょう。
施術後のアフターケア
- 肌の保湿:照射後の皮膚は乾燥しやすくなっています。やさしい保湿剤で十分なケアを行い、バリア機能をサポートしましょう。
- 紫外線対策:施術後の肌は紫外線に敏感です。外出時には日焼け止めをしっかり塗り、直射日光を避けてください。
- 傷や感染防止:レーザー照射部位はデリケートな状態です。掻きこわしや刺激を避け、傷口ができた場合は軟膏で保護しましょう。
まとめ
アトピー性皮膚炎に対するレーザー治療は、かゆみや皮膚炎症の緩和、肌質改善を目的とした選択肢の一つです。医療レーザーによって炎症性サイトカインが抑制され、皮膚常在菌のバランスが整うことで症状が軽減されるメカニズムが知られています。またレーザー脱毛の効果で皮膚刺激が減り、保湿ケアと併用することでバリア機能も向上します。
治療効果を得るには複数回の照射が必要で、治療費用や通院期間は少し高くなる傾向があります。医師や専門家と相談しながら、保険適用の光線療法や従来の薬物療法と組み合わせることも検討しましょう。費用面や効果、リスクを総合的に比較して、最適な治療プランを選ぶことが大切です。最新の研究成果も参考にしつつ、専門医の指導のもとで治療を受けることで、安全かつ効果的なアトピー改善を目指しましょう。